ピーター・ハーディケン

静岡市葵区の安東地区には、約6ヘクタールの敷地に木陰をつくる大木が連なる城北公園があります。静岡大学の跡地に整備されたこの公園は、日本庭園、子供広場、球技ができる自由広場、足マッサージ散歩コースを有し、市立図書館が併設されています。この公園は、都市公園法で定める徒歩圏域の人が利用する地区公園であり、朝から日が沈むまで多くの地区住民が利用し、親しまれています。しかし近年、市による大規模な再開発計画が持ち上がり、論争の的となっています。
遠方からの来訪者は、自転車、公共交通機関、または車で簡単にアクセスできます。車で公園を訪れたい人のために、週末は無料の路上駐車場があり、ほぼ常に空きがあります。公園周辺の住宅地には、来訪者が利用できる小規模な有料駐車場もいくつかあります。地域住民による詳細な調査によると、1年間を通じて、周辺の有料駐車場の利用率が80%を超えることはめったになく、駐車場が一日の一部の時間で満車になったのは、平日でわずか4日だけでした。
再開発計画と住民の反応
2021年、市は突如としてPark-PFI制度を用いた公園再開発計画を発表しました。この計画にはドライブスルーコーヒーショップと大規模駐車場の建設が含まれていました。この計画は市民からの意見を聞くことなく計画され、工事開始のおよそ1ヶ月前まで地域住民に知らされませんでした。これにより、大きな反対運動が始まりました。開発業者の誘致により,子どもたちに人気のある健康歩道、芝生広場、木陰の散策路、藤棚を撤去してカフェを出店する予定だったスターバックスコーヒージャパンは、反対する地元住民の声を聞いた後、プロジェクトから撤退し、計画は一時中断していました。

問題のあるアンケート調査
2024年の令和6年10月~11月にかけて市は「住民の意向を聞いて整備内容を考えたい」としてアンケート調査を実施しました。応用言語学と地域研究を専門とする社会科学研究者として、静岡市が実施した城北公園再開発計画に関するアンケート調査を分析した結果、調査手法に深刻な倫理的問題があり、市民の真の意思を反映しない恐れがあることが判明しました。この調査には以下のような重大な問題点がありました。
- フレーミングバイアス (Framing Bias)
- 質問や情報の表現方法が回答者に特定の方向性を与える傾向です。
- 誘導質問バイアス (Leading Question Bias)
- 質問の内容が回答者に特定の回答を促す傾向があります。
- 選択的情報提供(省略バイアス) (Selective Information Provision)
- 再整備計画を支持する情報のみを提供し、潜在的な欠点や代替案を省略することです。
- 限定的な回答選択肢(偽の二分法) (Limited Response Options)
- 5段階評価や偽の二分法により、細かなニュアンスや創造的な代替案を排除します。
- 条件付き質問バイアス (Conditional Questioning Bias)
- 肯定的回答者のみに追加質問を行い、批判的意見を軽視することです。
- 視覚的バイアス (Visual Bias)
- 提案された変更を示す画像が、緑地への影響を過小評価することです。
- 同意バイアス (Acquiescence Bias)
- 質問の表現が回答者に同意を促す傾向があります。
- 中庸バイアス (Middle Option Bias)
- 中央的な選択肢が妥協案として選ばれやすくなる傾向です。
- 社会的望ましさバイアス (Social Desirability Bias)
- 社会的に望ましいとされる回答を選びがちになる傾向です。
さらに詳しい分析はこちらのリンクをクリックして、 注釈版のアンケートを確認することで、これらの技法がどのように使われたかを確認できます。このアンケートの一番の問題点は、日本マーケティング・リサーチ協会(JMRA)が採用している国際的なEphMRA行動倫理規約の6.1項に定義されている「調査対象者を特定の回答に誘導することがないこと」に違反していることです。静岡市は統計の専門家に相談したと主張していますが、誰に相談したかを明らかにしていません。日本で最も著名な調査・統計研究組織であるJMRAのガイドラインを知らない専門家がいるとは考えにくく、この点で市の主張には疑問が残ります。
静岡市はこのアンケートの偏りについて再三指摘を受けているにもかかわらず、偏った調査結果を報道機関や一般市民に対して発表し続けています。

アンケートの影響と懸念事項
このような偏ったアンケートは、以下のような影響を及ぼす可能性があります。
1. 誤った情報のフィードバックループによる世論操作
2. 市の計画に対する広範な公共支持があるかのような誤った印象の創出
3. 民主的プロセスの歪曲
4. 市民の真の意思を反映しない結果の導出
5. 市政に対する市民の信頼の喪失
城北公園の再開発計画は、単なる都市計画の問題ではなく、民主的な意思決定プロセスと市民参加の在り方が問われる重要な事例です。市は市民の声に真摯に耳を傾け、公平で透明性の高い方法で合意形成を図るべきです。

終わりに
静岡市のアンケートのバイアスを指摘しつつ、市民の一部が最近、公園利用者を対象に大規模なアンケートを実施しました。このグループは、公園利用者の意見を正確に反映するための高品質で偏りのないデータを収集することに努めました。市のアンケートとは対照的に、市民のアンケートでは、回答した公園利用者の多数(80%以上)が、車を公園敷地内に持ち込まないことを望むと回答しました。市はこれらの結果を真剣に受け止め、地域住民や公園利用者の意見を尊重した再開発プロセスを進めるべきです。
研究者プロフィール:https://researchmap.jp/read0150176/
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